初心者のための住宅ローンの基礎知識をご案内。今回は「住宅ローン金利引き下げ制度のリスク」です。
トップページ / 住宅ローンの基礎知識「住宅ローン金利引き下げ制度のリスク」
住宅ローン利用者拡大の決め手としてほとんどの銀行が実施しているのが、金利引下げ制度です。その金利引下げには、ふたつのタイプがあります。
ひとつは、当初固定期間の引下げ幅を大きくして、その後は引下げ幅が小さくなるタイプ。
いまひとつが、完済までの全期間を通して引下げ幅が変わらないタイプです。
では主流となりつつある当初の引下げ幅が大きいタイプにはどんなリスクがあるのでしょうか。ひとつの例をみてみましょう。
たとえば、固定期間選択型5年ものの店頭表示の金利が3.25%として、これを当初5年間は2.2%引き下げて1.05%としている金融機関があるとします。
6年目からも金利引下げが続くのですが、引下げ幅は1.4%になります。
店頭表示の3.25%で3,000万円を、35年元利均等返済・ボーナス返済なしで利用すると毎月の返済額は11万9,681円です。
これが、金利1.05%になると8万5,386円に減少します。
実に3万5,000円近く負担が軽減されるのですから、大きなメリットではあるでしょう。
しかし、5年が経過するとどうなるのでしょうか。
仮に、現在とまったく同じ金利が続いていたとしても、3.25%の店頭表示金利からの引下げ幅は1.4%になりますから、適用金利は1.85%ということです。
その場合の返済額は9万6,768円。
金利が上がっていなかったとしても、返済額は13.3%増えてしまう計算です。
その上、金利が上がったらどうなるのでしょうか。
5年の聞に金利が1%上がっていると、適用金利は2.85%で、返済額は10万9,008円に増え、増額率は27.7%に、2%上がっていると12万3,571円で、増額率は44.7%にも達します。
今の金利状況を考えればそこまで金利が上昇するとは考えにくいですが、そうでなくても5年後には返済額が増えるのは確実である以上、余裕を持った資金計画を考えておく必要があります。
若いうちなら5年あればある程度は収入も増えるでしょうが、こうした返済額増加の可能性を全く考慮に入れておかないとローン破綻に陥ってしまう可能性が高いのではないでしょうか。
ただ、返済則問を短くすれば、この増額率はかなり抑えることができます。
ですから、固定期間選択型10年ものを、返済期間20年で利用するといったケースであれば、この当初の金利引下げ幅が大きいタイプを利用してもそれほど心配はいらないかもしれません。
いずれにしても借りてからも住宅ローン金利の動向に注意を払い、そうした金利上昇時には全期間固定金利に切り替えるなどの心構えが必要なのは言うまでもありません。
(続く)